レンズの夜露防止ヒーターを自作する / 理論編


星空撮影など夜露や結露の対策としてレンズの夜露防止ヒーターは必需品です。
数年前購入したヒーターを使用し重宝していますが、何となく自分でも夜露防止ヒーター(ニクロム線ヒーター)を自作してみたくなりました。

【課題】
① 電源は何を使用するか?エネループ電池やモバイルバッテリー等があります。
② ヒーターはニクロム線を使用するが、バッテリーの電圧に対応した抵抗値Ω(ニクロム線の長さ)は?
③ ヒーターの熱さはどれ位必要か?
④ バッテリーは何時間ヒーターを連続して使用出来るか?など難題を解いていく事にします。

最初にヒーターの材料として太さ0・2mm長さ10mのニクロム線をネットショップで購入しました、価格は240円です。
とりあえず実験用として10オームの長さに切ります、0・2mmのニクロム線は1mが34・4オームなので、長さは比例の計算式で求めます。
10オームは100cm34・4オーム=長さ?cm10オームから計算すると長さは約29cmになります。
抵抗計で計測すれば面倒な計算はしなくていいので便利です。

[実 験]
単三エネループ電池4本(4・8V)に10オームのニクロム線を繋ぐとほど良い熱さを感じましたが、8本(9・6V)に繋いだら
瞬時に熱くなり、火傷しそうでした。
ニクロム線は使用するバッテリ電圧によって長さ(抵抗値)を決めなければいけませんね。


[電源、バッテリー]
エネループ電池は繰り返し充電できるので、夜露対策に使用しているのは単三8本(9・6V)を使用している人が多いです。
最近はタブレットやスマホの予備電源としても使用できるので、USBモバイルバッテリが大容量で価格も安いのでお勧めかな・・・

[ニクロム線]
ニクロム線は、長さが短くなるほど抵抗が小さくなり電流が流れて熱くなります、反対に長くなるほど抵抗が大きくなり熱くなりません。
同じ長さの場合、太さが太いほど抵抗が小さく電流が流れ易くなり熱くなります、細くなるほど熱くなりません。
太さの違う種類があるので用途によって選んでください

[ヒーターの熱さ]
面倒な計算は後回しにして、現在使用しているヒーターの熱さは約2ワット(W)位で丁度いい熱さなので、ここらを基準として考えます。
バッテリ電圧に関係なく約2ワット(W)を確保する為には、使用するバッテリーの電圧によって逆算しニクロム線の抵抗値Ω(長さ)を決めます。
オームの法則を思い出しました、今頃になって必要になるとは、ん~頭が痛い・・・

① 単三エネループ電池4本(4・8V)使用する場合のニクロム線の抵抗値は幾ら必要か?必要電力を2ワット(W)として計算します。

  電力W=電圧VX電流A   電圧V=電流AX抵抗Ωから求めます、 2W=4・8VX電流Aから計算すると0・42A(アンペア)になります。
  つづいて抵抗を求めます4・8ボルト=電流0・42アンペアX抵抗Ωから計算すると11・4Ωになります。
② 単三エネループ電池8本(9・6V)使用する場合の抵抗値は上記の計算から45・7Ωになります。
③ モバイルバッテリ(5ボルト)を使用する時のニクロム線の抵抗値を求めます、上記計算式から抵抗値は12・5Ωになります。
抵抗値が決まったら、それぞれニクロム線の抵抗値を計測して長さを決めればいいという事になります。

実験に基づいて計算していますが、ニクロム線を取り巻く材質やレンズに取り付ける状況によっては、熱さが多少異なるので数値は参考程度にしてくださ
い。

ヒータは長時間使用する事が多いのでバッテリー電圧とヒーター抵抗値の組み合わせを間違えないでください。
熱過ぎると、火傷やレンズ等の故障原因にもなるので、くれぐれも必要以上の熱さにしないでください。

【バッテリー容量と持続時間】
電池やモバイルバッテリーには電池容量が表示してあります。
単三エネループ1本の場合は1・2V 900mAhと記してあります。
これは900mA(1・9アンペア)の電流を流し続けて1時間持ちこたえるという事です。
単三電池エネループ4本使用した場合は7,600mAh(7・6Ah)になるので7・6Aの電流を流し続けて1時間、0・76Aで10時間持続する事になります。
8本使用した場合は15,200mAh(15・2Ah)になるの15・2Aの電流を流し続けて1時間、1・52Aで10時間持続する事になります。
モバイルバッテリーは種類が沢山あります、あまり価格も変わらないので大容量の方がお得みたいです。
一例として10,000mAh(10Ah)の場合は10Aの電流を流し続けて1時間、1Aで10時間持続する事になります、またUSBポートが2個付いているものもあり
ヒーターも2個使用できるので便利です。

【夜露防止ヒーターを仮に2Wの熱さで使
用した場合】
単三エネループ電池4本使用した場合の使用電流は0・42A、8本使用した場合は0・21A、モバイルバッテリーは0・4Aとなるので
上記どのバッテリーを使用しても10時間以上は持ちこたえる事になります、これは計算上の数値であって長時間使用していると
電池の電圧も徐々に下がって熱さも徐々に下がります、正確な持続時間は計算できません、あとは実戦のみです。

2ワット(W)より熱くしたい時は、計算して2Wのニクロム線の長さより短くすればOKです。
例・・・モバイルバッテリー(5ボルト)の場合は12・5Ωだったので、3W必要なときは電力3W=電圧5VX電流?Aから計算すると0・6A(アンペア)になります。
続いて抵抗を求めます、電圧5V=電流0・6アンペアX抵抗?Ωから計算すると8・3Ωになります。
あとは8・3Ωになるようにニクロム線を作ればいいだけです。


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