[ スリットカメラの作り方 ]


スリットカメラの原理
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部屋の窓を想像してみてください。
窓を5cm位開けて、そこから2〜3m離れた所から窓の隙間を見ると、静止した風景と、人物や、犬、猫、車が通ると思います。
そこで、眼を閉じた状態で一度眼を開けて閉じますと、カメラで例えると一回シャッターを切った事になります。
高速で眼ばたきをしても、8ミリカメラのフイルムのように、一コマの写真が何枚も出来るだけで連続写真になりますが、本来のスリット写真にはなりません。

しかし、眼を開けたまま(シャッターを開いた状態)で、クルクルと眼を回転させることは出来しませんが、その替わりにフイルムを巻きながら、撮影すればどうなるでしょうか ? 隙間から見える静止した風景は、流れた状態になり写りませんが、窓の隙間を通過する動く物体は、フイルムを移動した長さ(最大36枚撮りフイルムの1本の長さ)だけ、1枚の画像として途切れずに、スリット写真として記録することができます。
競馬等の決勝写真判定機も、構造は違いますが、スリットカメラで出来ています。

私の作ったスリットカメラは、銀塩フイルムを使用する35ミリカメラで、レンズとフイルムの間に垂直に開けた、上記の窓に相当するスリット(隙間0.5mm前後)板を取り付け、シャッターを開放(バルブ)にして、フイルムをモーターで巻きながら撮影したものです。

スリットカメラの作り方

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フイルムが手動で巻き戻せるカメラなら、どんなカメラでもかまいません。
一般の35ミリカメラが、使用できるフイルムも長く、失敗も少ないので作り易いと思います。
最初のうちは、壊れてもいいカメラがあれば、試作のつもりで、挑戦してみて下さい。

私は電源に、自動車用の重い12ボルトのバッテリーを使用し、フイルムを巻く手段として、ワイパーのモーターを改造して取り付けましたが、重くて移動が大変でした。
最近は、乾電池で動く小さくて高出力のモーターがあると思うので、改造して取り付けると機材がとても軽くなり、行動し易くなると思います。

            
試作1号機(昭和56年製作)
ボディは鉄を溶接して作ったので、とても重く、しかも溶接しているので、使用できるカメラも、限定される。
カメラは天地逆に、三脚に取り付け出来るように、カメラネジが設けてある。


         
改良型(昭和59年頃製作)
ボディはスライド調整でき、高さの異なる色々なカメラが、取り付け可能にしてあり、ステーを組み替えて、カメラは天地逆に、三脚に取り付け出来るように、してある。
カメラはペンタックスLXをニコンマウントに改造して使用しました。


問題はフイルムの回転軸を、いかに回転むらなく廻すかと言う事が、最大の課題です。
ギヤーを使用する方法が理想的ですが、私は手軽に作る為、フイルム巻き取り軸の真上に、直接モーターを取り付け、フイルムを回転させましたが、この構造ではぶれ易く、軸のセンターを合わすのが、かなり難しいです。
又、動く被写体なので、速さに合わせて回転速度をいかに設定するかという事くらいです。
回転速度が速すぎると、丸い物体が横長の円になり、遅すぎると縦長の円になります。
右に動く物体と、左に動く物体によってフイルムの巻き取り方向が違うので、カメラを上下逆に、三脚に取り付け出来るようにすると、撮影が容易になります。

撮影上の注意点
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先ず、レンズにキャップをして、フイルムを未露光のままシャッターを36枚切ります。
次に巻き戻しボタンを押したまま、フイルムを巻き戻せる状態にしてから、シャッターをバルブ(開放)にしたままフイルムをモーターで回転させて撮影します。

※この時、巻き戻しボタンを押し忘れてモーターを廻すと、フイルムが切れたり、カメラが 壊れたりすることが あるので注意してください。

レンズの絞りと、使用するISO感度のフイルムの選択は、撮影データーを録りながら決めるといいでしょう。

以上は、私の手作りのスリットカメラを例に、解説してきましたが、まだ他にも構造や種類の違うスリットカメラがありますので、研究してスリット写真の世界を楽しんで下さい。



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モデルは nagomi ちゃん、3才で〜す。

スリット写真を、EPSONプリンターPMー4000PXで、210mm幅のロール紙にプリントしました。
同じ大きさのプリント写真が、JR山口線の徳佐駅にも展示して頂きました。


スリット写真は、手作りのスリットカメラで、フイルムを回転させて撮影しました。  BACK (スリット写真)   HOME                   1